テクニカル分析における有名なチャートパターンの1つに、

「グランビルの法則」

という「移動平均線」を用いたサイン(ジグナル)があります。

テクニカル指標(インジケーター)の中でも「移動平均線」は、
チャート上にに表示させているトレーダーも多い傾向にあるため、
この「グランビルの法則」を意識しているトレーダーも少なくありません。
 
ただ、この「グランビルの法則」は、多くのテクニカル分析関連の書籍や、
その手の情報を取り扱っているブログなどで紹介されているものの、

「このようなチャートパターンです(このような法則です)」

といった説明だけが漠然とされている傾向にあるのが実情で、
その「理由」や「背景的な理論」は、あまり詳しく説明されていません。
 
そこで、ここでは、その「グランビルの法則」について、
そのような法則(チャートパターン)が有効とされている理由。
 
また、何故、相場がそのように動く傾向にあるのか、など、
その「理論的な背景」を具体的に言及していきたいと思います。

このようなチャートパターンの法則などは、ただ漠然と、
それを何らかの「サイン」として利用していくだけであれば、
その理論的な背景などは、どうでもいい事なのかもしれません。

ですが、その理由や理論をしっかりと理解していれば、
より深い視点でチャートパターンを分析する事も可能になります。

少なくとも、私はそういった「理論的背景」を重視して、
その理論に沿ったトレードを行っていく事を意識しているため、
ここで言及するような内容こそが「重要」だと考えているわけです。

グランビルの法則と移動平均線の関係。その理由と理論的背景

まず「グランビルの法則」に該当するチャートパターンは、
あらゆるサイトにそのパターンが図解で解説されているため、
この法則そのものについては要点だけを掻い摘んで解説していきます。
 
法則そのものは「移動平均線」と「現在レートの推移」によるもので、
以下のような4つのパターンが「買い目線によるサイン」とされています。

↓↓↓

1:上向きの移動平均線をレートが下から突き抜ける

2:上向きの移動平均線にレートが上から接近、接触して方向転換する

3:上向きの移動平均線をレートが上から下に抜け、再び上方向に転換する

4:移動平均線から離れたレートが移動平均線側に方向転換する

これらに該当するチャートパターンとなった場合において、
画像内の「黄色の〇印」のあたりが「買い」のサインとなります。
 
その後、グランビルの法則に沿った値動きとなる場合においては、
そのまま相場が上昇していく可能性が高いと考えられるわけです。

 

上記は全て「買い目線」のチャートパターンとなっているため、、
各目線(移動平均線とレートの向き)をそのまま真逆にしたものが、
グランビルの法則の「売り目線」のチャートパターンになります。

この4つ(売り目線を含めると8つ)のチャートパターンが、
グランビルの法則という一括りのサインになっているという事です。
 
ただ、上記の「1」「2」「3」のチャートパターンは、
その理論的な背景についても共通するものになっているものの、
4つ目の「4」のパターンのみ、少し毛色が違うサインとなっています。
 
よって、まずは先立つ「1」「2」「3」のパターンから、
この「グランビルの法則」における理論的背景を解説していきます。
 

移動平均線の方向に沿ったレートの順行サインについて

まず「1」「2」「3」のチャートパターンに共通する点は、

「移動平均線の方向とレートの方向が同じ(※上記では上向き)」

という点で、その後、グランビルの法則に沿った値動きとなる場合は、
レートが移動平均線の方向に沿って進行していく事になります。
 
そもそも「移動平均線」というインジケーター(テクニカル指標)は、
レートの一定範囲の平均値が時系列で線状に表示されたものであり、

「一定周期の相場の大まかな流れをその方向で把握する」

という見方が基本前提となっています。

よって、移動平均線の方向が「上向き」なのであれば、
その移動平均線の対象となる期間の平均レートを捉える上では、
相場の流れ(トレンドの方向)は上昇傾向という見方になるわけです。
 
ただ、相場の流れや方向は常に変動するため、
移動平均線の方向に沿ったポジションを建てたからと言って、
相場がそのまま移動平均線の方向に沿って動き続けるとは限りません。

 
そこで、相場が移動平均線の方向に沿って動いていく状況、
その可能性が高い状況を判断する指針(サイン)として、

1:上向きの移動平均線をレートが下から突き抜ける
 (下向きの移動平均線をレートが上から突き抜ける)

2:上向きの移動平均線にレートが上から近寄って方向転換する
 (下向きの移動平均線にレートが下から近寄って方向転換する)

3:上向きの移動平均線をレートが上から下に抜け、再び上方向に転換する
 (下向きの移動平均線をレートが下から上に抜け、再び下方向に転換する)

これらのような「グランビルの法則」が提唱されています。
 
そして、上記に該当するような相場状況となった場合に、
相場が移動平均線に沿って動き続ける可能性が高いとされる理由は、

「移動平均線から把握できる市場のポジション状況(売買状況)」

に起因しています。
 
そもそも移動平均線は、平均レートを算出する対象期間内で
実際に行われた売買の「平均レートの推移」を表しているため、

「その対象期間内に建てられたポジションのみを捉える視点」

においては、

・現在レートが移動平均線の上にある状況
 → 対象期間内に建てられた買いポジション全体で含み益が出ている
 → 対象期間内に建てられた売りポジション全体で含み損が出ている
・現在レートが移動平均線の下にある状況
 → 対象期間にに建てられた買いポジション全体で含み損が出ている
 → 対象期間内に建てられた売りポジション全体で含み益が出ている

このような見方が出来る事になります。

ただ「移動平均線」には、その期間ごとの出来高(取引量)が、
各平均レートの算出値に反映されているわけではありません。
 
よって、上記で示した「移動平均線」と「現在レート」の位置関係による、
その期間内に建てられたポジション全体の含み益、含み損状況の把握は、
あくまでも平均レートのみを捉えた「目安」という事です。

その上で「1」「2」「3」のチャートパターンに該当する状況は、
実質的には「どの段階でサインを捉えるか」の違いであって、

2:上向きの移動平均線にレートが上から接近、接触して方向転換する

この状況は、もし「方向転換」が無ければ、
レートが移動平均線を下方向に貫く形となるため、
そこから相場が方向転換した場合は「3」の状況に至ります。

↓↓↓

3:上向きの移動平均線をレートが上から下に抜け、再び上方向に転換する

また、この「3」の状況はレートが移動平均線を上に抜けた時点で、
実質的に「1」に該当する状況に至る事になるわけです。

↓↓↓

1:上向きの移動平均線をレートが下から突き抜ける


 
つまり、上記の「1」「2」「3」のチャートパターンはいずれも、
レートが移動平均線と接近、接触する状況を前提としているものであり、

・対象期間内に建てられた買いポジション全体で常に含み益が出ている
・対象期間内に建てられた買いポジション全体の含み損が含み益に転換

実質的に、このような状況が前提となっていると共に、
その含み益が更に膨らみ始めている状況を意味しています。
 
よって、このような状況下におけるトレーダー心理としては、

・含み益が出始めた人は買いポジションを解消する事なく保持する。
 → 売り注文が減る

・含み損が出始めた人、膨らみ始めた人は売りポジションの解消に動く
 → 売り注文を解消するための買い注文が増える

といった動向に至る可能性が高くなると考えられます。
 
結果として、売り注文が減り、買い注文が増えていく事によって、
そこから相場が上昇していく可能性が高いという見方が出来るという事です。

ここで解説した内容は「買い目線」での考え方となっているため、
下向きの移動平均線がレートが接近、接触していく場合においては、
真逆の視点で「売り目線」のグランビルの法則が成り立つという事です。

移動平均線とレートの乖離を狙ったサインについて

対して4つ目に挙げた以下のチャートパターンは、
先立って解説した「1」「2」「3」のチャートパターンとは、
根本的な「視点」や、その「理論的な背景」が大きく異なります。

↓↓↓

4:移動平均線から離れたレートが移動平均線側に方向転換する

この「4」のチャートパターンは「1」「2」「3」に共通していた、
移動平均線の「向き」から捉える相場の流れを実質的に度外視した上で、

「移動平均線とレートの乖離(それぞれの距離が離れた状況)」

と、その「反動(戻り)」を狙ったサインとなっています。
 
移動平均線が平均レートを算出する対象期間内において、
実際に行われた売買の「平均レートの推移」を表している以上、
上記のような移動平均線と現在レートの距離感が著しく離れた状況は、

「平均レートよりも現在レートが下がり過ぎている状況」
「売りポジション全体において大きな含み益が出ている状況」

という事になります。
 
このような状況下におけるトレーダー心理としては、

・安くなったレートを狙って新規の買いポジションを建てる
 → 買い注文が増える
・それを見越して十分な含み益が出ている売りポジションが解消される
 → 売り注文を解消するための買い注文が増える

といった動向に至る可能性が高くなると考えられるため、
結果として、売り注文が減り、買い注文が増えていく事によって、
そこから相場が上昇していくという見方が出来るわけです。

同じくここで解説した内容は「買い目線」での考え方となっているため、
移動平均線の上の位置にレートが乖離していく場合においては、
真逆の視点で「売り目線」のグランビルの法則が成り立つという事です。

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以上、ここではグランビルの法則、4つのチャートパターンと、
それぞれのチャートパターンが実現に至る場合の理由(理論)を、

「買い目線」

におけるチャートパターンを例に挙げて解説させて頂きました。
 
では、ここで言及したグランビルの法則に沿ったチャートパターンを狙い、
その法則に沿った売買を行っていく事で「勝てるのか」という点については、
別途、以下の記事で詳しく言及していますので併せて参考にしてください。

グランビルの法則に沿ったトレードで勝率とリターンを上げる方法