一般的に「移動平均線」と呼ばれるものは「単純移動平均線」であり、
チャートツールなどでは「MA」「SMA」と表記されるものが該当します。
ただ「移動平均線」には「単純移動平均線」とは別に、
・加重移動平均線(WMA) ・指数移動平均線(EMA) |
といった「3種類の移動平均線」があり、トレーダーによっては、
上記の加重移動平均線や指数移動平均線を利用している場合もあります。
もちろん、これらの移動平均線は全て異なるロジック(計算式)があり、
それぞれに相応の「特徴」や「利点」などが存在するため、
「どのようなテクニカル分析に重きを置きたいか」
によって、適した移動平均線が異なってきます。
そこでここでは、これら3種類の移動平均線の違いや特徴を解説していきます。
最もオーソドックスな単純移動平均線(SMA)の使い方、ロジックなどは、 以下の記事で詳しく解説していますので、こちらも併せて、参考にしてください。
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3つの移動平均線の違いと特徴について。
まず単純移動平均線と加重移動平均線、指数移動平均線、全てに共通する点として、
インジケーターとしての「見た目」は以下のような1本線が表示される形になります。
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その上で、それぞれの移動平均線のロジック、計算式の違いは以下のようになっています。
単純移動平均線(SMA) 一定期間の終値を平均した平均値が線状に表示される移動平均線 ※オーソドックスな「平均の計算式」に基づく平均値を算出 |
加重移動平均線(WMA) 直近の終値の値を倍増させる計算式で求めた平均値が線状に表示される移動平均線 ※4日間のWMAの場合、直近の値を4倍、その前日を3倍、その前々日を2倍にして平均値を算出 |
指数移動平均線(EMA) 直近の価格のみを2倍にする計算式で求めた平均値が線状に表示される移動平均線 ※4日間のEMAの場合、直近の値のみを2倍、1~3日前の値は全てそのままで算出 |
それぞれのロジック、計算式の違いによって生じる特徴としては、
単純移動平均線に対して加重移動平均線や指数移動平均線は、
「直近の値の比重を高めた値で移動平均線を表示させる」
という形となるため、必然的に現在レートの動きに近いものになり、
現在レートの動きに対して、より過敏な動きを見せるラインが表示されます。
また「加重移動平均線」と「指数移動平均線」の2つの対比においても、
直近の値のみを2倍する指数移動平均線の方がより現在レートに近い動きとなります。
よって、現在レートの動きに対する反応の「早さ」の順列は、
指数移動平均線(EMA) > 加重移動平均線(WMA) > 単純移動平均線(SMA) |
このようになるため「単純移動平均線」は他の2種類の移動平均線と比較して、
「現在レートの動きに対する反応が遅い」
という事になるわけです。
主な違いは計算式の違いに伴うレート変動に対する「反応」の速さ。
以下、実際に3種類の移動平均線を表示させた際の現在レートに対する反応の違いですが、
「WMA(赤)EMA(緑)に対してSMA(青)のみが遅れて反転している」
という事が分かります。
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ただ、こちらは「25本のローソク足を対象とする移動平均線(各25MA)」であり、
いわゆる「短期間の移動平均線」にあたるため、そこまでの顕著な違いはありません。
また、指数移動平均線と加重移動平均線の反転のタイミングにも違いは見られないと思います。
ただ、以下のような「75本のローソク足を対象とする移動平均線(各75MA)」では、
3種類の移動平均線の「反転タイミングの違い」はより、顕著になります。
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こちらでは「指数移動平均線(EMA)」がまず最初に上向きとなり、
追って「加重移動平均線(WMA)」が上向きになっている事が分かります。
対して「単純移動平均線(SMA)」は実際のレートが上昇傾向になり、
指数移動平均線と加重移動平均線が上向きとなったタイミングにおいても、
そのまま下向きの形状を保っている状況が続いています。
その後、かなり遅れてようやく上向きになっている事から、
仮に、この時の相場の反転を狙った「買い」のポジションを、
「移動平均線の反転と共に建てる」
という前提のルールでトレードを行おうとしていたなら、
レートの動きに対する反応が早い移動平均線を指針にしていた場合ほど、
より早いタイミングで安値の買いポジションを建てられていた事になります。
このように3種類の移動平均線は、そのパラメーター(平均値の対象期間)を、
「長期間を対象とするパラメーターを設定にするほど違いは顕著になる」
という事です。
単純移動平均線(SMA)よりも「WMA」「EMA」の方が優れている?
移動平均線は「方向転換のタイミング」や「向き」「傾斜」などを指針として、
実際のトレード判断(テクニカル分析)に利用していく使い方が一般的です。
よって、先ほどのようなチャートの事例のみを目にする上では、
現在レートの動きに対して反応が早い移動平均線ほど、
テクニカル分析の指針として優れているように感じられるかもしれません。
ですが、そもそも「移動平均線」というインジケーターの「役割」は、
「一定周期の相場の大まかな流れが移動平均線の形状で把握する事」
にあります。
ローソク足などの実際の相場の動きでは「流れ」は読み取り難いため、
レートの平均値を線状にする事で、その「流れ」「方向」を把握するわけです。
そんな移動平均線の本来の「役割」を前提とする上では、
あまりに現在のレートの動きに対して過敏に反応してしまうようでは、
そこから「流れ」や「方向」を捉える事もできなくなります。
それこそ現在レートに対する反応が早いほど「優れている」と考えるなら、
指数移動平均線(EMA)や加重移動平均線(WMA)の計算式を更に改良し、
直近の平均値の値を3倍、5倍、10倍といった数値としていけば、
「より反応の早い移動平均線を表示させる事はいくらでも可能」
という事になります。
ですが、それを極端な形で行ってしまうほど、その移動平均線は、
現在レートの推移をそのままなぞっていくだけのラインになってしまいます。
当然、それでは「移動平均線の意味を成さない」という事になりますから、
「現在レートの動きに対する反応が早いほど優れているというわけではない」
という事が移動平均線における1つの真理に他ならないという事です。
移動平均線は反応が早い(過敏)なほど優れているというわけではない。
となると、移動平均線の良し悪しの判断は、
「とはどれくらいの反応の速さが最善なのか」
という「度合い」の判断が全てになってくるわけですが、
結局のところ、そこに明確な「答え」は出ていません。
だからこそ、トレーダーによって実用している移動平均線は異なる傾向にあり、
「単純移動平均線では反応が遅すぎる」 「指数移動平均線、加重移動平均線は反応が早すぎる」 |
といった人それぞれの見解や見方があるのが実情です。
ただ、これは結局のところ「ケースバイケース」なのが実際のところで、
先ほど例に挙げた以下のチャートのように、レートの動きに対して反応が早い、
指数移動平均線、加重移動平均線が良いトレード結果をもたらす事もあります。
↓↓↓
ですが、相場には「ダマし」と呼ばれるような値動きがあるように、
指数移動平均線や加重移動平均線が方向転換したと思った矢先で、
再び相場が、その逆方向に反転して動いていくような場合もありえます。
そのような場合に単純移動平均線だけが「反転サイン」を示していなければ、
指数移動平均線、加重移動平均線の反転サインををアテにする事なく、
「単純移動平均線を指針としていた事が正解となるケースもありえる」
という事です。
その上で、更に移動平均線は「パラメーター(平均値の対象期間)」によっても、
その形状は3種類の移動平均線の全てにおいて変わってくるのが実情のため、
・3種類のどの移動平均線が最も有効性が高いのか ・どのようなパラメーターの移動平均線の有効性が高いのか |
このような課題は、移動平均線を利用しているトレーダーにとっては、
検証に検証を重ねて答えを出していくしかない重要課題の1つという事です。
それでも移動平均線における有効な平均期間の設定値には諸説あるため、 実際のチャート上に表示されている移動平均線のパラメーターは、 短期間、長期間、いずれも、トレーダーごとに異なる傾向にあります。 ただ、一般的に「この平均期間(パラメーター)が有効」と言われている、 短期間、長期間、それぞれのパラメーターの設定値がないわけではありません。 その具体的なパラメーター設定と、その理由などについては、 こちらの記事で詳しく言及していますので併せて参考にしてください。
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ただ、実際に移動平均線を利用しているトレーダーにおいて、
指針としているトレーダーが最も多い移動平均線は、
やはり、最もオーソドックスな「単純移動平均線(SMA)」です。
その上で、テクニカル分析は「統計行動の分析」でもあるため、
「結局のところ指針としているトレーダーが多い指標ほど有効性が高くなる。」
という側面も現実としてありますから、そこに重きを置くのであれば、
オーソドックスな単純移動平均線を支持するのが最善という事です。
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反応の速さ、遅さは結局のところケースバイケースのため、
私自身、実際に移動平均線を利用してトレードを行う場合には、
やはり、オーソドックスな単純移動平均線を使うようにしていますね。
その他、移動平均線についての講義が幾つかありますので、
こちらも併せて、是非、参考にしてください。
テクニカル分析については、他にも多くの記事を公開していますので、
是非、他のブログ記事の方も併せて参考にして頂ければと思います。