ボリンジャーバンドは「移動平均線」を中心とする形で、

・平均レートに対して現在のレートが乖離する範囲
・値動きの変動範囲(ボラリティ)

これらの目安となるものが以下のような形で表示される指標となっています。

こちらのチャート画像のようにボリンジャーバンドを表示させる場合には、
上記のように「3つのバンド」を併せて表示させるのが一般的で、

±1σの範囲内(※上記、緑色のバンド内)で相場が動く確率:68.27%
±2σの範囲内(※上記、青色のバンド内)で相場が動く確率:95.45%
±3σの範囲内(※上記、紫色のバンド内)で相場が動く確率:99.73%

統計的にはこのような確率論になる(らしい)といった事がよく書かれているため、

「実際の相場の値動きを統計した裏付けのある数字なのだろう。」

と勘違いしている人も多いようですが、上記のような「確率」はいずれも、
実際の値動きを統計した上での確率が示されているわけりません。
 
更に言えば、現実の相場における「変動値(終値)」は全くもって、
上記のような確率の範囲には納まらない傾向にあるのが実情となっています。
 
つまり、ボリンジャーバンドの±3σ(画像内、紫色の外側のバンド)の範囲内に、
相場が99.7%の確率で納まる、というような情報や認識は「間違っている」という事です。

 

相場がボリンジャーバンド±3σの範囲内に99.7%の確率では納まらない理由。

ボリンジャーバンドは「移動平均線」と連動しているインジケーターであり、

『移動平均線における平均値の内訳を反映させた指標』

となっています。
 
例えば、10日間の終値が常に100円だった相場の10日間の平均レートは100円ですが、
5日間の終値は50円で、その後、5日間の平均レートが150円の相場でも、

(50円+50円+50円+50円+50円+100円+100円+100円+100円+100円)/10 = 100円

このように平均レートは「100円」という事になります。
 
どちらの相場も「平均レート」という数字だけを見れば同じ「100円」ですが、

・100円のレートが全く変動しなかった相場
・50円から150円までの3倍ものレート変動が伴った相場

このような2つの相場の値動き「同じ視点」で捉えるべきではありません。
 
そこで「ボリンジャーバンド」では一定期間の平均レートを中心とした上で、
その平均値の算出対象となった期間のレートの「ばらつき(分散)」を、
以下のような計算式で求めて、その値をチャート上に表示しています。

この計算式によって求められる値は「標準偏差」と呼ばれる、

「統計上のデータのばらつき(散らばり)を数値化する数式」

で、ボリンジャーバンドは、この値を1倍、2倍、3倍にしたものを
以下のように「±1σ」「±2σ」「±3σ」といった形で表示しているわけです。

↓↓↓

ここでお伝えした「標準偏差」や、その計算式の意味や詳細については、
以下の記事で、別途、詳しく解説していますので併せて参考にしてください。

ボリンジャーバンドの計算式の意味と「標準偏差」について

 

ボリンジャーバンド = 標準偏差(終値データの分散※ちらばり)

その上で、世の中の多くの現象におけるデータの標準偏差(ばらつき)の統計確率は、

『正規分布』

と呼ばれる以下のような確率の分布(統計グラフ)に集約されると言われています。

↓↓↓

つまり、ボリンジャーバンドの解説と併せて示されている「確率」の数値は、
上記の『正規分布』の統計確率に基づく数字がそのまま示されているだけであり、
この確率論は正規分布に基づくデータが対象でなければ「再現」される事はありません。
 
ただ、データのばらつき(標準偏差)による統計確率において、

・標準偏差による確率の分布(統計グラフ)が「正規分布」に(近く)なるもの
・標準偏差による確率の分布(統計グラフ)が「正規分布」に(近く)ならないもの

この判断は、実際に「統計」を取っていかなければ「わからないもの」であり、
その上で、正規分布となるようなデータは、より多くの「統計」を取っていくほど、
そのちらばり(標準偏差)の統計グラフは「正規分布」の形状に近づいていきます。
 
逆にそうではないものは、対象となるデータの数を減らしても、増やしても、
そのちらばり(標準偏差)の統計グラフが「正規分布」のようになる事はありません。

 
よって、相場の値動きにおける「終値」のちらばり(標準偏差)の統計確率が、
正規分布に近いものになるかどうかは、より多くのデータ(終値)を対象に、
その「ちらばり(標準偏差)」を統計していく事でハッキリします。
 
以下は、そのような前提で私が利用している「tradingview」で表示できる、、
ローソク足4000本の終値平均におるボリンジャーバンドを表示した

「2017年6月~2018年6月までのビットコインのチャート(4時間足)」

です。

↓↓↓

赤く色を付けている部分が、正規分布では99.7%の確率で納まるとされている、
標準偏差±3σの範囲に終値が「納まっていない部分」に該当するのですが、
上記の通り、1年間の終値の6割(60%)ほどは標準偏差±3σに納まっていません。
 
つまり、標準偏差±3σの範囲に終値が納まっているのは40%ほどのため、 
相場における「終値」は『正規分布の確率には納まらない』という事であり、

±1σの範囲内(※上記、緑色のバンド内)で相場が動く確率:68.27%
±2σの範囲内(※上記、青色のバンド内)で相場が動く確率:95.45%
±3σの範囲内(※上記、紫色のバンド内)で相場が動く確率:99.73%

このような確率論は、全く持って『再現されていない』という事です。

よって、ボリンジャーバンドの解説において、実際の相場の値動き(変動)が、
上記の確率論に基づいているかのような内容になっているサイトなどは、
その運営者がボリンジャーバンドの事をあまりよく分かっていない可能性があります。
 
インターネット上にこの手の記事を書いているような人の大半は、
どこかに書いてあった表面的な情報をただそのまま転載している傾向にあるため、

「その人自身が、その内容や詳細をあまりよく分かっていないのが実情」

という事です。

相場の変動値(終値)は『正規分布』の確率論には基づかない。

ただ、ここでお伝えしているのは、

「誤った統計確率に基づいた解釈でボリンジャーバンドをアテにするべきではない」

という事であって「ボリンジャーバンドは使えない」という話ではありません。
 
それこそ「ボリンジャーバンド」を提唱した『ジョン・ボリンジャー』という方は、
以下のようなボリンジャーバンドの使い方を推進していたと言われています。

・レートがボリンジャーバンドの上に抜けた
 ⇒ 相場が大きな「上昇トレンド」に入ったとみて買う

↓↓↓

・レートがボリンジャーバンドの下に抜けた
 ⇒ 相場が大きな「下降トレンド」に入ったとみて売る

↓↓↓

つまり、ボリンジャーバンドによって想定した値動きの範囲を超えたタイミングにおいて、
それを「強いトレンドの発生シグナル」と判断していく形で実用していたわけです。

 
これらの使い方は上昇していった相場に対しては「買い」で動き、
また、下降していった相場に対しては「売り」で動く事を意味しているため、
いわゆる『順張りトレード』に分類される使い方をしていた事になります。
 
ですが、

「相場の終値が99.73%の確率でボリンジャーバンドの±3σの範囲内に収まる」

という「誤った統計確率」を真に受けて利用しているようなトレーダーほど、
ジョン・ボリンジャーとは「真逆の使い方」をしている傾向あるという事です。

***

本当の意味でボリンジャーバンドのロジックや計算式を理解し、
その背景にある理論を踏まえた有効な使い方を追及していく上では、

『ボリンジャーバンドにおける「標準偏差」とはどういった値なのか』

といったところを「統計」の見地も含めて理解しておくに越した事はないため、
別途、以下のような記事も併せて参考にしていただければと思います。

ボリンジャーバンドの計算式の意味と「標準偏差」について

ただ、そのような視点における計算式や理論の解説はかなり専門的になるため、

「最低限の理屈を踏まえて有効な使い方が分かればそれでいい。」

という場合は、専門的な理論解説を省いた形でボリンジャーバンドの見方や使い方、
それらに基づくトレード判断などを解説している以下の記事を参考にして頂ければと思います。

ボリンジャーバンドの見方、有効な使い方は逆張りか順張りか