多くのトレーダーが利用している「移動平均線」には、
幾つかの有名なトレードシグナル(サイン)があります。

今回は、その中の代表格である、

・ゴールデンクロス
・デッドクロス

この2つの移動平均線によるシグナル(サイン)について、
なぜ、そのシグナル(サイン)が「有効」と言われているのかなどを、
そのロジックや背景にある理論などから詳しく解説していきたいと思います。

ゴールデンクロス、デッドクロスは移動平均線によるシグナルのため、
移動平均線の基本的なロジックなどについては以下の記事を併せて参考にしてください。

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移動平均線の理論とロジック。テクニカル分析の使い方について

ゴールデンクロスとデッドクロスのシグナルとロジックについて。

ゴールデンクロスとデッドクロスは移動平均線を用いた代表的なシグナルで、
パラメーター(平均の値を求める期間)の設定が異なる2つの移動平均線から、

・ゴールデンクロス:短期の移動平均線が長期の移動平均線を上方向に貫く
・デッドクロス:短期の移動平均線が長期の移動平均線を下方向に貫く

これらに該当する状況の事を言います。

「ゴールデンクロス」のシグナル

「デッドクロス」のシグナル

一般的にゴールデンクロスは相場が上昇する際のシグナルとして、
いわゆる「買い(ロング)のサイン」と言われています。
 
対してデッドクロスは相場が下降する際のシグナルとされているため、
一般的には「売り(ショート)のサイン」と言われているわけです。
 
ただ「ゴールデンクロス」と「デッドクロス」のシグナル上の定義は、
先ほど解説した短期、長期の移動平均線の交差(クロス)のみとなっているため、

・短期移動平均線のパラメーター(平均の値を求める期間)の設定
・長期移動平均線のパラメーター(平均の値を求める期間)の設定

などは、とくにシグナルそのものの判断基準に含まれていません。
 
よって「移動平均線」というインジケーター(テクニカル指標)の特性上、
移動平均線はチャートの時間足やパラメーター次第で形状が全く異なるため、

・どの時間足のチャートを見ているか
・どのようなパラメーターの移動平均線を表示させているのか

これらの違いでゴールデンクロス、デッドクロスが、
実際のチャート上に現れるタイミングやポイントも全く異なります。

 
これは移動平均線を用いたシグナル全般に言える事ですが、
仮に自分がチャート上に表示させている移動平均線が、
ゴールデンクロス、デッドクロスなどのサインを示したとしても、

・自分と全く同じ時間足チャート
・自分と全く同じパラメーターの移動平均線

これらが共通しているトレーダーだけがそのシグナルを目にしています。
 
異なる時間足チャートを目にしているトレーダーや、
異なるパラメーターの移動平均線を表示させているトレーダーなどは、

「とくに該当するシグナルを目にしていない」

という事になるわけです。
 

ゴールデンクロス、デッドクロスのポイントは時間足と移動平均線によって異なる。

それでも、

・一定数の多くのトレーダーが目にしている時間足チャート
・多くのトレーダーが表示していると言われるパラメーターの移動平均線

これらによるゴールデンクロス、デッドクロスのシグナルについては、
一定数のトレーダーが意識している(意識する可能性が高い)と言われています。

ここで言う「移動平均線の有効性の高いパラメーター設定」については、
別途、以下の記事で詳しく解説していますので併せて参考にしてください。

移動平均線の有効なパラメーター設定と組み合わせについて

その上で、ゴールデンクロス、デッドクロスのシグナルが、
なぜ、買いのサイン、売りのサインと言われているのかというと、
これはそもそもの「移動平均線のロジック(仕組み)」に起因しています。
 
移動平均線は一定期間の平均レートをグラフ上にした上で、
時間の推移と共にそのグラフが「移動」していく指標のため、

・短期移動平均線の現在の位置(平均レート)
・長期移動平均線の現在の位置(平均レート)

これらの違いはその平均値を算出した対象期間における、
それぞれの「平均値の違い」という事になります。

 
要するに短期、長期、2つの移動平均線の位置関係は、

・短期間で行われた売買による平均レート
・長期間で行われた売買による平均レート

これらをそれぞれ表すため

・短期の移動平均線が長期の移動平均線の下にある
 → 短期間(近い期間)で売買した人達の方が安いレートで売買している
・短期の移動平均線が長期の移動平均線の上にある
 → 短期間(近い期間)で売買した人達の方が高いレートで売買している

といった見方をする事ができるわけです。
 
このような考え方から、ゴールデンクロス、デッドクロスは、
以下のような「分岐点」に該当する論理が成り立ちます。

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「ゴールデンクロス」を境目とする平均レートの論理

「デッドクロス」を境目とする平均レートの論理

よって、ゴールデンクロスのシグナルが現れる前の時点では必ず、
短期間の平均レートが長期間の平均レートの「下」に位置しているため、

 短期の移動平均線が長期の移動平均線の下にある
 → 短期間(近い期間)で売買した人達の方が安値で売買している

このような状況にあり、ゴールデンクロスの状況が生じた事で、

 短期の移動平均線が長期の移動平均線の上に推移していく
 → 短期間(近い期間)で売買した人達の方が高値で売買している

という状況となっていく事を意味します。
 
逆にデッドクロスのシグナルが現れる前の時点では必ず、
短期間の平均レートが長期間の平均レートの「上」に位置しているため、

 短期の移動平均線が長期の移動平均線の上にある
 → 短期間(近い期間)で売買した人達の方が高値で売買している

このような状況にあり、デッドクロスの状況が生じた事で、

 短期の移動平均線が長期の移動平均線の下に推移していく
 → 短期間(近い期間)で売買した人達の方が安値で売買している

といった状況となっていくわけです。
 

短期間(近い期間)で売買している人達のレートが「高値」なのか「安値」なのか。

基本原則として、値動きやトレンドの予測は「近い期間のレートの推移」に重きを置きます。
 
そしてこれは「平均レートの推移(移動平均線)」を捉える場合も同じであり、

・短期間の平均レート(短期移動平均線の推移)
・長期間の平均レート(長期移動平均線の推移)

であれば、やはり短期間の平均レートの推移が現在の値動き、
および現在のトレンドの予測において「重要度が高い指針」となります。
 
その上で、長期の移動平均線よりも下に位置していた短期の移動平均線が、
長期の移動平均線を上に抜けていく「ゴールデンクロス」の状況は

・近い範囲の売買に伴う平均レートが長期間の平均レートと一致した状況
・近い範囲の売買に伴う平均レートが長期間の平均レートを超えた状況

このような経過状況を意味するため、近い範囲で売買を行っているトレーダー達が、
より「高値」を前提とした売買を行っている状況とみなす事が出来ます。
 
故に、そのような状況を「上昇トレンドのシグナル」と判断するわけです。

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また、長期の移動平均線よりも上に位置していた短期の移動平均線が、
長期の移動平均線を下に抜けていく「デッドクロス」の状況は

・近い範囲の売買に伴う平均レートが長期間の平均レートと一致した状況
・近い範囲の売買に伴う平均レートが長期間の平均レートを下回った状況

このような経過状況を意味するため、近い範囲で売買を行っているトレーダー達が、
より「安値」を前提とした売買を行っている状況とみなす事が出来ます。
 
故に、そのような状況は「下降トレンドのシグナル」と判断するという事です。

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ゴールデンクロス、デッドクロスの有効性と信憑性。

ただ、このシグナルは特定の時間足のチャート上における特定の移動平均線のみが、
その時々のタイミングで「条件」を満たしていくものでしかありません。
 
そもそも「移動平均線」というインジケーター(テクニカル指標)は、

・どの時間足チャートに移動平均線を表示させるのか
・どのようなパラメーター(平均の対象となる期間)を設定するのか

といった違いで全く異なる形状の移動平均線が表示される事になるため、
トレーダーごとにチャート上に表示されている移動平均線は大きく異なります。
 
その上で、このゴールデンクロス、デッドクロスのシグナルに限らず、
移動平均線を用いたシグナルは全般的に、どの時間足チャートにおける、
どのパラメーターの移動平均線によるサインが有効という決まりはとくにありません。
 
チャート上にゴールデンクロスやデッドクロスのシグナルが現れる、
実際のタイミングやポイントはトレーダーごとに大きく異なるという事です。

 
よって、当然の事ながら、それらのシグナル全てが有効となるはずもなく、
相場が全くもって「シグナル通りには動かないケース」も多々あります。

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例えば、以下のチャートでは「ゴールデンクロス」のシグナル発生後、
相場はサインの通り、大きく上昇トレンドを形成していく形となっています。

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対して、以下のチャートでは「デッドクロス」の発生ポイントが、
実質的な「底値」に近いレートとなったまま相場が上昇しているため、
これは完全な「ダマし」と言われるようなサインになってしまっています。

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ここでは相場がシグナル通りに動いたケースとそうではないケースを挙げましたが、
実際の相場における傾向としては「ダマしが多いシグナル」なのが実情です。

 
故に、このサインだけをアテにしてトレードを行っているトレーダーはいないに等しく、
このシグナルだけを指針としていく形では度重なる「ダマし」を回避する事ができず、
サインが出現する度に負けトレードを繰り返してしまう事になってしまいます。
 
それでも、多くのトレーダーが目にしている時間足チャートや、
その上で多くのトレーダーが表示しているパラメーターの移動平均線において、

「他の何らかの基準と併用する形で2つのシグナルを意識している」

トレーダーは決して少なくありません

その上で、このゴールデンクロス、デッドクロスの実用において、
これらのシグナルをもう1歩、前に進めた形のより強いサインとして、

「パーフェクトオーダー」

と呼ばれる3つの移動平均線を用いたシグナルがあります。

この「パーフェクトオーダー」については以下の記事を併せて参考にしてください。

パーフェクトオーダーのロジック。なぜ、有効なサインなの?

ただ、実際のトレードに「移動平均線」を利用していくトレーダーは、

・移動平均線同士の推移、交差状況に重きを置くトレーダー
・移動平均線と現在レートの推移、交差状況に重きを置くトレーダー

この2つの方向性に分かれる傾向にあり、ここで解説させて頂いた、
ゴールデンクロス、デッドクロスは「前者に該当するシグナル」となっています。
 
上記の2つの方向性についてはどちらも一長一短があるのですが、

「移動平均線そのものがパラメーター次第で異なる形状になる」

という実情を踏まえると、移動平均線同士の推移や交差に重きを置くより、

・全てのトレーダーが実質的に同じ推移を目にしている現在レート
・その現在レートと移動平均線の推移や交差状況

私はこれらに重きを置く方に合理性があると考えています。
 
そのため、移動平均線を用いたトレードをメインにしているわけではありませんが、
移動平均線と現在レートの推移、交差状況に重きを置いているのが率直なところです。

移動平均線と現在レートの推移や交差状況によるシグナルとしては、

「グランビルの法則」

などが有名どころになると思いますが「グランビルの法則」については、
別途、以下のような記事がありますので、併せて参考にしてください。

グランビルの法則と移動平均線の関係。その理由と理論的背景

以上、ここではゴールデンクロス、デッドクロスについて、
そのロジックや背景的な理論を踏まえた有効性などを解説させて頂きました。
 
その他、移動平均線についての講義が幾つかありますので、
こちらも併せて、是非、参考にしてください。

移動平均線の理論とロジック。テクニカル分析の使い方について

移動平均線の有効なパラメーター設定と組み合わせについて

加重移動平均線(WMA)と指数移動平均線(EMA)の違いと特徴。

テクニカル分析については、他にも多くの記事を公開していますので、
是非、他のブログ記事の方も併せて参考にして頂ければと思います。

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