テクニカル分析で「移動平均線」を用いる場合、その有効な「使い方」としては、

・全く別のテクニカル指標と併用して利用する
・複数の期間(パラメータ)を対象とする移動平均線を複合的に利用する

この「どちらか」であり、特定の期間(パラメータ)による、
特定の移動平均線1本のみで相場を予測するような事や、
それのみに従ってトレードを行ってく事はまず無いと思います。
 
そもそも移動平均線はレートを平均する期間の設定値(パラメータ)によって、
その形状は全く異なるものがチャート上に表示されるものであり、

『この範囲の期間を対象とする移動平均線こそが正しい(有効)』

というような「絶対的な移動平均線」のようなものは存在しないからです。
 
よって、移動平均線をテクニカル分析に利用しているトレーダーは、
別のインジケーターを併せる複合的なテクニカル分析を行うか、

・短期間の平均レートを対象とする移動平均線
・長期間の平均レートを対象とする移動平均線

このような「異なる期間」の移動平均線を複数チャートに表示させています。

それでも移動平均線における有効な平均期間の設定値には諸説あるため、
実際のチャート上に表示されている移動平均線のパラメーターは、
短期間、長期間、いずれも、トレーダーごとに異なる傾向にあります。
 
ただ、一般的に「この平均期間(パラメーター)が有効」と言われている、
短期間、長期間、それぞれのパラメーターの設定値がないわけではありません。

 
そこで有効性が高いとされる移動平均線のパラメーター設定について、
複数の移動平均線を組み合わせる視点と併せて言及していきたいと思います。

移動平均線の有効なパラメーター設定と組み合わせについて。

そもそも「移動平均線」の成り立ちは一定期間のレートの変動値を平均化し、
その推移を線状に表していくものであり、平均レートを線状にする事で、

「値動きにおける大まかな流れを読み取れる」

と言われています。
 
相場レートそのものは常に上方向、下方向へと変動していくため、、
その先端の動きを追いかけているような状況では「流れ」は読み取り難く、
レートの平均値を線状にする事で、その「流れ」を把握するわけです。
 
ただ、移動平均線によって読み取れる「おおまかな値動きの流れ」は、
あくまでも、その集計期間を対象とする平均レートによる流れでしかありません。
 
仮にその集計期間(パラメーター設定)を「10日」とすれば、
10日間の値動きを平均化したレートの推移(流れ)は分かります。
 
ですが、その10日間の値動きを平均化したレートの推移(流れ)が、
必ずしも、その後の値動きの予測に役立つとは限らないわけです。

 
そこで多くのトレーダーは、短期間、長期間の移動平均線、
更に、その中間の移動平均線、というように複数の平均線を表示させ、
それらを複合的に分析して相場の「流れ」を読み取っている傾向にあります。
 
その上で、一般的に「有効」とされている移動平均線の設定値は、

「20日間の移動平均線(短期)」
「60日間の移動平均線(長期)」

または

「25日間の移動平均線(短期)」
「75日間の移動平均線(長期)」

などが「有効」とされ、実際に、このような集計期間を対象とする形で、
移動平均線をチャート上に表示させているトレーダーは多いです。
 
この設定値はテクニカル分析の発祥である株式相場の分析において、
実際に株式の売買を行える証券取引所の「営業日」の関係から、

「土日を除いた1週間の営業日の日数を5日間」

とした上で、1カ月間の営業日の合計日数が約20日間、
3カ月間の営業日の日数が60日間という考え方。
 
また、以前の株式相場は土曜日も取引が可能となっていた経緯による

「日曜日のみを除いた1週間の営業日の日数を6日間」

とした上で、1カ月間の営業日の日数が25日間、
それに準じた3カ月間の営業日の日数が75日という考え方。
 
このような証券取引所の営業日数が移動平均線における、
20日、25日、60日、75日といった設定期間の要因となっています。

 
また、より長期間の移動平均線を重視するトレーダーなどは
同じ理屈で200日、225日といった移動平均線を用いる場合もあり、
これは営業日数10カ月間の平均レートを意味するという事です。
 

多くのトレーダーが指針とする設定値の背景は「営業日数」

ただ、この「営業日数」を前提とする移動平均線(MA)のパラメーター設定は、

・現在の営業日数で考えるなら25日、60日、75日等のMAは合理性に欠ける
・営業日数が前提であるなら5分足、1時間足などのMAはどうなるのか
・その前提において、なぜ30日間、90日間、300日間のMAを重視するのか

といったような「不合理」や「疑問」を生じさせる考え方でもあります。
 
現に現在の「株式相場」やFXの「為替相場」は週5日の取引が基本のため、

「理論上の合理性という観点では20日、60日、200日の移動平均線が有効」

という事になります。
 
ですが、もともとは株式市場の営業日数に合わせた
25日、75日、225日の移動平均線が「基本」となっていたため、

「すでに多くのトレーダーが使っている移動平均線が有効性を保つ」
「すでに移動平均線はそのパラメーターで確立されたインジケータである」

といったような考え方で「営業日数の変化」は実質的に無視する形で、
多くのトレーダーが25日、75日、225日の移動平均線を使い続けていたため、
このような経過が今現在の移動平均線事情にそのまま繋がっているわけです。
 
結果として、移動平均線をチャート上に表示させる場合においては、

・5日間の営業日をカウントする20日60日200日等の移動平均線の利用者
・6日間の営業日をカウントする25日75日225日等の移動平均線の利用者

この両方が存在し、これはもはやどちらが正しいとも言えません。
 
一定数の人がそのインジケーター(移動平均線)を目にしている時点で、
そのインジケーターは統計的な心理や実際の売買に影響を及ぼすからです。

 
そして、そのような考え方がそのまま5分足、1時間足など、
それ以外のあらゆる時間足チャートの移動平均線にも適応されています。
 
そもそも移動平均線は、その時間足チャートの「ローソク足の数」で、
移動平均線の平均期間(パラメーター)を設定する形になっているため、

・20日間の移動平均線(20MA)→ 1日足チャートのローソク足20本分の移動平均線
・25日間の移動平均線(25NA)→ 1日足チャートのローソク足25本分の移動平均線
・60日間の移動平均線(60MA)→ 1日足チャートのローソク足60本分の移動平均線
・75日間の移動平均線(75NA)→ 1日足チャートのローソク足75本分の移動平均線

これが移動平均線の「本来の概念」に沿った移動平均線という事になりますが、
実際に移動平均線を5分足や1時間足のチャートに表示させているトレーダーも、
移動平均線のパラメーター設定は「20MA」「60MA」などに設定しています。
 
要するに、5分足や1時間足で移動平均線を表示しているトレーダーは、

・5分足の20MA  → 5分足チャートのローソク足20本分の移動平均線
 ⇒  5分×20本 = 100分間の移動平均線を表示
・1時間足の20MA → 1時間足チャートのローソク足20本分の移動平均線
 ⇒ 60分×20本 = 120分間の移動平均線を表示

このような100分間、120分間の平均レートによる移動平均線を見ている事になり、
これはもはや「営業日数」の概念が、そもそも無関係なものになっています。
 
ただ、これも、もはや「営業日数」の概念がどうこうではなく、

「移動平均線は20MA、25MA、60MA、75MAを利用しているトレーダーが多い」

という視点のみで、そのまま、これらのパラメーター設定を、
5分足、1時間足といった時間足チャートに適応している状況です。
 
よって、理論的な合理性という点では1日足以外は「不合理」と言えますが、
現実に多くのトレーダーは移動平均線をチャートの「時間足」を問わず、

・20MA(ローソク足20本の終値を平均化した移動平均線)
・25MA(ローソク足25本の終値を平均化した移動平均線)
・60MA(ローソク足60本の終値を平均化した移動平均線)
・75MA(ローソク足75本の終値を平均化した移動平均線)

これらのいずれかや複数を設定してチャート上に表示させています。
 
ここで解説したような前提や不合理性を理解した上で表示している人もいれば、

「移動平均線はこのようなパラメーターで表示しましょう」

というような情報のみを捉えて素直に表示させている人もいると思いますが、
実情として、1日足以外のパラメータには実質的な「合理性」は無いに等しく

「多くのトレーダーがそのようなパラメーターで移動平均線を表示している。」

という点のみで、それに沿った移動平均線が実用されているという事です。

「移動平均線」というインジケーターの不合理性と合理性

そもそも、対象となる平均レートの対象を1カ月、3カ月とする考え方も、
特段、その平均レートによって表示される移動平均線の形状や向きが、
相場の流れ、方向性の指針として優位という根拠はとくに「無い」ようです。
 
つまり、移動平均線というテクニカル指標(インジケーター)は、
非常に知名度が高く、利用者も多いインジケータであるものの、
その理論的な裏付けには、少なくとも私は「弱い」と感じています。

とは言え、この「移動平均線」に限らず、テクニカル指標においては、
その前提となる理論が十分な正当性に欠けるものであっても、

・多くのトレーダーが特定の指標に沿った予測を同じように行い
・その予測に沿った売買を同じように行っていく

という状況に至れば、それが実際の「値動き」を作り出していく事になります。

つまり『移動平均線』においては、その利用者が非常に多いため、
実際に多くのトレーダーが利用している移動平均線には一定範囲で

「値動きへの影響を及ぼす余地がある」

と考えられます。

よって、その影響を踏まえた値動きの予測を行える余地があるため、
そこが最も強い移動平均線の拠り所になっているのが実情という事です。

ただ、1本の移動平均線で読み取れるものは、あくまでも、
その平均レートの対象となった期間のみを対象とする動向となるため、

・特定した期間のみを対象とする1本の移動平均線だけではアテにならない
・短期から長期まで複数の期間を対象とする移動平均線を複合的に見る

といった捉え方、使い方が一般的であり、そのような特性から、
全く別の指標と併用する形で利用しているトレーダーも少なくありません。
 
いずれにしても、インジケーターとしては極めて知名度が高い指標であり、
実際にチャートに表示しているトレーダーも非常に多い点も含めて、

「この指標の動向そのものがテクニカル分析に基づく売買に影響を及ぼす」

という見方も十分にできるレベルの指標である事は間違いないと思います。
 
指標の形状としても単一の移動平均線であれば1本のラインのみのため、
初心者でも扱いやすいテクニカル指標(インジケーター)の1つです。
 
私が推奨している『FXism及川デイトレ大百科』の及川圭哉さんのトレード手法も、
この「移動平均線」のみを用いた非常に有効なノウハウとなっていますので、

『移動平均線を使った有効性の高いトレードノウハウ』

に、もし、ご興味があれば、以下の記事も併せて読んでみてください。

及川圭哉氏,FXism及川デイトレ大百科のトレードルール検証実績

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テクニカル分析については、他にも多くの記事を公開していますので、
是非、他のブログ記事の方も併せて参考にして頂ければと思います。

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